どんな卵を選べばいいの?

1、平飼い卵(※1)か、放牧卵(※2)を選ぶ

2、飼育密度

3、農場を実際に見る(写真・動画を見せてもらう)

4、どんな食べ物を与えられているか

5、デビーク(くちばしの切断)の有無

6、強制換羽の有無

7、床の状況

 

 

「平飼い」なら大丈夫、とは言えない。飼育密度の確認を。

平飼いの卵というと、「広々としたところで飼育された、健康な鶏の卵」というイメージがあります。 でも、現実には必ずしもそうではありません。

2014年に初めて行われた平飼卵の飼育密度調査(※3)では、41.5%が1000㎠/羽以下という結果でした。そして実に15.1%は370㎠/羽という超過密飼育だったのです。370㎠というと、19cm×19cm程度しかありません。日本では、このような狭小スペースであっても「平飼い」と表示することができてしまいます。

鶏卵の表示に関する公正競争規約及び施行規則(※4)では、卵のパッケージに「平飼い卵」と表示するためには、「鶏舎内または屋外で鶏が自由に地面を運動できるように飼育」することが必要です。しかしそれ以上の表示規定はありません。EUでは鶏を放して飼育する場合の密度は9羽/㎡以下という規定がありますが、日本ではそのような数値基準はありません。たとえば飼育密度が16羽/㎡であっても「平飼い」と表示できてしまうのが、今の日本です。実際に16羽/㎡、またはそれ以上の密度で飼育している「平飼卵」もあります。

*日本の平飼い卵の飼育密度について

http://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=370

畜産研究所などの研究論文では、平飼いの場合、飼育密度を高くすると病気の発症率、および卵質の低下などが起こる事が指摘されているそうです。「平飼い」と書かれていても安心せず、まずは飼育密度を確認したほうがよいでしょう。

 

実際に見る

ケージ飼育の卵より平飼いの卵、平飼いの卵より放牧卵の方が、より動物福祉に配慮されている可能性は高いでしょう。

しかし大事なのは、その飼育方法を、自分自身で養鶏農家さんに確認する事です。実際に見学させてもらうことがベストですが、それが難しかったら動画や写真見せてもらえるところもあります。鶏に「幸せかどうか?」を聞くことはできませんが、鶏冠(とさか)がきれいでピンと立っているか、羽つやがよいか、生き生きとしているか、鶏の姿を見ることで、鶏の状態を推し量ることはできます。

巣や砂場や止まり木が設置されているかどうかの確認も重要です。平飼い養鶏ではこれらのものが用意されていないところもあります。

 

何を食べているか

ノンGM(非遺伝子組み換え作物)・有機・ポストハーベスト(収穫後農薬:防カビ剤)フリー・抗生物質フリーといったことも動物福祉に関わってきます。

私たちも体に悪いものを食べていると、健康ではいられないし、良い精神状態を保つことが困難になります。

地面に生えている草を自分で自由に採食することができるか、それが無理なら刈り取った生草(※5)が与えられているかどうかも動物福祉をはかるものさしになります。

  

デビークの有無を確認する

デビーク(雛の段階で行われるクチバシの切断) 引用元:wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Debeaking#/media/File:ChickBeingDebeaked.jpg
デビーク(雛の段階で行われるクチバシの切断) 引用元:wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Debeaking#/media/File:ChickBeingDebeaked.jpg

鶏同士のつつき合いを防ぐために、デビークが行われる事があります。 デビークは鶏へ大きな苦痛を与えるものです。

平飼いや放牧は「群飼い」のため、鶏同士のつつき合いが激しくなり、弱い鶏が殺されてしまうような事もあります。そのためデビークを行う養鶏場は少なくありません。

しかし、飼育密度が低く広々としたところで飼育しているため、殺されてしまうような激しいつつき合いが起こらず、デビークも行っていない平飼いや放牧養鶏場もあります。

クチバシがなければ地面を思うようにつつくことができず、野菜を噛み切る力もなくなります。鶏にとってくちばしは手のようなもので、デビークはとても残酷な行為なのです。

 

強制換羽の有無を確認する

産卵を開始して約1年が経過すると、卵質や産卵率が低下します。この時点でと殺される場合もありますが、長期にわたって飼養しようとする場合には、強制換羽がおこなわれます。

強制換羽とは、鶏に2週間程度、絶食などの給餌制限をおこない栄養不足にさせることで、新しい羽を強制的に抜け変わらせることです。換羽期に羽毛が抜けかわると再び卵を産むようになるという鶏の生態を利用し、生産効率を上げるために行われています。

ショック療法ともいえる強制換羽は、通常の鶏飼育時よりも死亡率が高いことが知られています。 

日本の採卵養鶏の56%で絶食あるいは絶食絶水法での強制換羽が実施(※4)されています。

 

床の状況を確認する

放牧卵であれば大丈夫ですが、平飼卵の場合は床の状況を確認する必要があります。

アメリカの全米鶏卵生産者団体(United Egg Producers)の規定※6 では、平飼卵は「床の15%以上に敷料」という規定があります。またEU指令にも、2002年以降に新設あるいは改築する施設では一羽あたり250㎠そして地面の1/3以上を敷料にしなければならないという決まりがあります。また2012年以降はケージ飼育する場合は、つつくことのできる敷料が義務付けられています※7 。一方日本ではそのような規制はありません。そのため平飼いでも床が全面金網のところがあるからです。

 

※1 鶏舎内又は屋外において、鶏が床面又は地面を自由に運動できるようにして飼育する方法

※2 平飼いのうち、日中の過半を屋外において飼育する方法

※3 2014年飼養実態アンケート調査報告書 http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/index.html

※4『鶏卵の表示に関する公正競争規約および施行規則による定め』 次の飼育条件を満たした場合に限り、表示することができる。 ア 「平飼い」又はこれに類する用語 鶏舎内又は屋外において、鶏が床面又は地面を自由に運動できるようにして飼育した場合。 イ 「放飼い」又はこれに類する用語 平飼いのうち、日中の過半を屋外において飼育した場合。なお、施行規則で定める基準(120日齢以降は1平方メートル当たり5羽以下で飼育するものとする)により飼育した場合は、「放飼い(特定飼育卵)」と表示することができる。

※5 バタリーケージ飼育の鶏は生の草が与えられることはありません。安価な遺伝子組み換えの配合飼料の中にアルファルファなどの牧草が乾燥させて粉砕されて一緒混ぜられています。

※6 United Egg Producers「Animal Husbandry Guidelines for U.S. Egg Laying Flocks 2016」 Editionhttp://www.unitedegg.org/information/pdf/UEP-Animal-Welfare-Guidelines2016.pdf

※7 Council Directive 1999/74/EC of 19 July 1999 laying down minimum standards for the protection of laying hens

http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1435151498494&uri=CELEX:31999L0074

鶏の苦しみを止めることが出来るのは私たちだけ。

 

卵の消費を見直す

「卵を食べるのを止める」難しいようですが不可能な選択ではありません。卵に含まれる栄養素は他の食品からの摂取が十分可能だからです。しかしこの選択が難しければ、消費量を減らす、という選択をすることができます。

日本人の一人当たり卵の消費量は世界第3位。そして日本人の一人当たりの1週間の卵の消費量は6個以上です(*1)。

カナダの研究では、卵黄を一週間に3個以上食べる人は2個以下の人に比べると、プラーク堆積量(プラークが堆積すると、心臓病を発症するリスクが増大する)が遥かに多いことが明らかになっています。今の卵の消費量の多さは鶏の苦しみにつながるだけではなく自分自身の健康にも益するものではありません。

 

卵を食べるのであれば、ごく少量の動物福祉に配慮された鶏の卵を食べるという倫理的な選択を私たちはすることができます。

 

*1 2013年度IEC(国際鶏卵委員会)報告